『薬屋のひとりごと』第29話―月の精の謎と猫猫の秘策

未分類
この記事を読むとわかること

  • 特使が求めた「月の精」の正体とその伝説
  • 猫猫が考えた幻想的な演出と巧妙な策略
  • 壬氏が「月の精」を完璧に演じ、池に飛び込むまでの顛末

特使からの無理難題、「月の精に会いたい」という要望に応えるため、猫猫は花街にいた“月の精”の正体を探ることに。

50年以上前に花街で舞を披露したという伝説の存在。
その足跡をたどる中、猫猫は緑青館のやり手婆から当時の話を聞き、特使の祖父が残した幻想的な絵と照らし合わせながら
謎を解き明かしていく。

後宮の桃園で偶然出会った子翠との会話をきっかけに、猫猫は一つの秘策を思いつく。
そして宴の日、特使たちの前に美しい月の精が現れるが、その正体はなんと……!?

「月の精」の伝説がもたらしたもの――猫猫の策略の結末

特使の反応と宴の行方

特使からの依頼は「月の精に会わせてほしい」という無理難題だった。

そんな存在が本当にいるのかと疑問を抱きつつも、猫猫は調査を開始する。

手がかりとなったのは、50年以上前に花街にいたという伝説の「月の精」だった。

猫猫が訪れたのは、長年の歴史を誇る花街・緑青館。

そこでやり手婆から話を聞くと、確かに過去に「月の精」と呼ばれる存在がいたことがわかる。

彼女は見た者すべてを魅了するような美しい舞を披露したと言われており、当時の花街でも伝説的な存在だったようだ。

さらに調べを進めると、驚くべき事実が判明する。

特使の祖父は、かつてこの国を訪れた際にその「月の精」の舞を見て、深く心を奪われたのだという。

帰国後、彼は「月の精」を描いた幻想的な絵を残していたというのだ。

この絵こそが、今回の依頼の発端となった可能性が高い。

猫猫はその絵とやり手婆の話をもとに、「月の精」が舞ったという場所へと足を運ぶことにした。

その場所は、後宮内のとある桃園。

果たして、そこに月の精の秘密が隠されているのだろうか——?

緑青館のやり手婆が語る過去

猫猫が足を運んだのは、花街の名門・緑青館。

ここには、50年以上前からこの街を見守り続けてきたやり手婆がいた。

「月の精」の正体を探るため、彼女から話を聞くことにしたのだ。

やり手婆の記憶によれば、確かにかつて「月の精」と呼ばれた美しい踊り子が存在していたという。

彼女は夜ごと舞を披露し、その幻想的な姿に誰もが魅了された。

しかし、その素性を知る者はほとんどおらず、いつの間にか姿を消してしまったらしい。

「本当に美しい舞だったよ。まるで、月の光そのものが舞っているようだったね……」

そう語るやり手婆の目には、どこか懐かしさが滲んでいた。

さらに彼女は、特使の祖父についても覚えていた。

「確かにいたよ。異国の青年が、あの舞を見てうっとりしていたね。帰国する時、何度も『忘れられない』って言ってたっけ」

猫猫は、この話から一つの推測を立てる。

特使の祖父は、月の精の舞を忘れられず、帰国後にその姿を絵に残したのではないか

もしそうならば、彼が描いた絵を手がかりに、当時の舞の詳細がわかるかもしれない。

猫猫はさらに調査を進めるべく、次なる手がかりである特使の祖父が描いた幻想的な絵を確認することにした。

特使の祖父が残した幻想的な絵の意味

やり手婆の話を手がかりに、猫猫は特使の祖父が残したという「月の精」を描いた幻想的な絵を確認することにした。

その絵は、特使が大切に持参しており、国宝級の扱いを受けているという。

猫猫はさっそくその絵を見せてもらうことになった。

絵を広げると、そこには銀色の衣をまとい、舞う女性の姿が描かれていた。

彼女は、夜空に浮かぶ月を背に、流れるような動きで舞っている。

背景には満開の桃の花が描かれ、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

猫猫は、その絵の細部を観察しながら考える。

「なるほど……この衣装と舞の型……どこかで見たことがあるような……」

よく見ると、衣の裾には独特の模様があり、それが後宮で伝わる古い舞の流派と一致することに気がついた。

さらに、背景に描かれた桃の木。

「……これ、後宮内の桃園じゃない?」

かつて「月の精」が舞ったのは、やはり後宮内の桃園だった可能性が高い。

猫猫は絵とやり手婆の話を照らし合わせながら、月の精の正体に一歩近づいた。

そこで彼女は、次なる手がかりを探すために後宮の桃園へと足を運ぶことを決める

桃園での偶然の出会い――猫猫が思いついた秘策

特使の祖父が残した絵の背景に描かれていた桃の木。

その場所こそが、かつて「月の精」が舞を披露した後宮内の桃園だと猫猫は推測した。

実際に足を運べば、新たな手がかりが得られるかもしれない。

猫猫が桃園へ向かうと、そこには思いがけない人物がいた。

それは、虫捕りに夢中になっている子翠だった。

「猫猫じゃないか!こんなところで何してるんだ?」

子翠の手には、珍しい昆虫を入れた籠が握られていた。

何気ない会話を交わすうちに、猫猫の脳裏にひらめきが走る。

「……そうか、方法があるかもしれない」

彼女が思いついたのは、“月の精”を再現するための秘策だった。

「ねぇ、子翠。この虫、貸してくれない?」

「え? いいけど……何に使うんだ?」

猫猫は、特使を満足させるための計画を立て始めた。

その内容は、意外な人物を“月の精”に仕立て上げるというものだった――。

虫捕りをしていた子翠との会話

桃園に足を踏み入れると、猫猫の耳にカサカサと葉擦れの音が聞こえた。

音のする方を見ると、そこには地面にしゃがみ込み、何かを熱心に捕まえようとしている子翠の姿があった。

「何してるの?」と猫猫が声をかけると、子翠は得意げに籠を掲げた。

「見ろよ、珍しい虫がいたんだ!」

籠の中には、透き通るような翅を持つ蛍のような虫が光を放っていた。

「これは後宮にしかいない種類で、月夜に光るんだぜ!」

子翠は目を輝かせながら説明する。

その言葉を聞いた瞬間、猫猫の頭の中である考えがひらめいた。

「……ねえ、その虫、ちょっと貸してくれない?」

「えっ、何に使うんだ?」

「いいから、ちょっとだけ!」

猫猫は籠の中の虫を見つめながら、“月の精”を再現するための策を思いついた。

「うまくいけば、本物の月の精みたいに見えるかもしれない……」

子翠との何気ない会話が、大胆な計画へとつながることになったのだった。

月の精を再現するための意外な方法とは

子翠から受け取った虫を見つめながら、猫猫は「月の精」を再現するための秘策を考えていた。

50年前、月夜の下で舞を披露した女性。その姿は幻想的で、見る者を魅了したという。

その雰囲気を再現するには、単に美しい衣装や舞だけでは足りない。

「月光を浴びて、まるで光をまとっているように見えた……」

やり手婆の言葉を思い出しながら、猫猫は閃いた。

「この虫の光を利用すれば、まるで本物の月の精が舞っているように見せられるかもしれない」

そこで彼女は、いくつかの準備を進めることにした。

まず、舞い手に着せる衣装。

猫猫は後宮に伝わる衣装の中から、淡い銀色の布を使用した舞衣を選んだ。

この布は、月の光を受けるとわずかに輝きを放つ特別なものだった。

さらに、子翠から借りた虫を利用する。

虫たちを特別な籠に入れ、周囲に放つことで、舞い手の周りを幻想的な光が包むように見せる。

これにより、まるで月の精が夜空の下で舞っているかのような光景を作り出すことができる。

しかし、最大の問題は舞い手の存在だった。

「誰に舞ってもらうか……」

猫猫は思案し、ある人物の顔を思い浮かべる。

「あの人なら、完璧な“月の精”になれるかもしれない……」

猫猫は、計画を実行に移すため、ある人物のもとへと向かった。

十六夜の月の下、現れた“月の精”の正体

宴の夜、空には美しい十六夜の月が浮かんでいた。

桃園に設けられた舞台は、薄い霧が立ち込め、まるで夢幻の世界のように演出されている。

特使たちは期待に胸を膨らませ、「月の精が本当に現れるのか」と目を凝らしていた。

やがて、静寂の中に琴の音が響き渡る。

月光を浴び、銀色の衣をまとった舞い手がゆっくりと舞台へと歩み出た。

その姿は、まさに50年前の伝説に語られる「月の精」そのものだった。

淡い光を放つ虫たちが舞い手の周囲を飛び交い、まるで月の光が揺らめいているかのように見える。

特使は息をのんでその光景を見つめた。

「……美しい。本当に月の精が舞っているかのようだ……」

ゆったりとした動きから次第に華やかな旋律へと変わり、舞の動きも流麗なものへと移っていく。

しかし、猫猫だけは冷静にその様子を観察していた。

彼女の目には、舞い手の正体がはっきりと分かっていたのだ。

舞が最高潮に達し、最後の一振りを決めると、月の精は静かに頭を垂れた。

その瞬間、猫猫はにやりと笑う。

「やっぱり……ね」

そこにいたのは、本物の「月の精」などではない。

猫猫の秘策によって作り上げられた“月の精”の正体とは——

特使を招いた宴の準備

「月の精」に会いたいという特使の願いを叶えるため、猫猫は後宮の桃園での宴を計画した。

しかし、本物の「月の精」が存在しない以上、誰かがその役を演じなければならない

猫猫は用意周到に計画を立て、後宮内の協力者たちと準備を進めることにした。

まず、舞台となる桃園の整備。

夜の雰囲気を引き立てるため、庭師たちに依頼して灯籠を並べ、霧を発生させる仕掛けを施した。

これにより、幻想的な雰囲気が演出される。

次に、舞い手の衣装。

猫猫は、後宮の衣装係に頼んで月光を反射する淡い銀色の舞衣を用意させた。

この衣装を身にまとえば、月の下で揺れるたびに輝きを放ち、伝説の「月の精」さながらの姿を作り出せる。

さらに、子翠から借りた光る虫たちを利用することも忘れなかった。

彼らを舞台の周囲に放つことで、まるで舞い手自身が光をまとっているような効果を生み出す。

「これなら、特使も信じるはず……」

そして最後の準備、それは舞い手の選定だった。

猫猫が白羽の矢を立てたのは——あの人物

「さて、引き受けてもらえるかしら?」

猫猫は密かに微笑みながら、その人物のもとへと向かった。

美しく舞う“月の精”の驚きの正体

宴が終わり、特使が帰路につこうとしていた。

彼の周囲には護衛が控えているものの、月の光だけがぼんやりと足元を照らし、道は静寂に包まれている。

そんな中、ふと気配を感じた。

月明かりの下、霧が立ち込める小道の先に、誰かが立っていた

銀色の衣が風にそよぎ、闇の中でほのかに輝く。

特使が足を止めると、その影はふわりと舞い始めた。

静寂の中、まるで夢の中の光景のような舞が繰り広げられる。

音もなく、影のように軽やかに、まるで月の光そのものが踊っているかのようだった。

袖がひるがえるたびに、銀糸が月の光を受けてかすかに光る。

さらに、その周囲には小さな光がふわりと浮かび上がった。

猫猫が仕込んでいた光る虫が、舞い手を取り囲み、まるで本当に月の精が光をまとっているように見せていたのだ。

特使はただ、息をのんでその場に立ち尽くしていた。

「……まさか、本当に……?」

彼がその姿を瞳に焼きつけようとした、その瞬間——

風が吹き抜け、視界を遮るように霧が広がった。

そして、舞い手の姿はふっと闇に溶けるように消えた

「……消えた?」

特使が驚きの声を漏らす。

特使は猫猫に駆け寄り、月の精の行方を尋ねるが、そこには何もない。

特使は、驚きとともに微笑を浮かべた。

「これが“月の精”……」

闇に隠れた場所で猫猫はその様子を見届け、静かに小さく息をついた。

「誰にも見せなくて良かったと・・・」

彼女の策は見事に成功し、特使の心に
忘れられない幻の記憶
を残したのだった。

月の精の伝説がもたらしたもの――猫猫の策略の結末

「月の精」を目の当たりにした特使は、しばらくの間、その場から動けなかった。

「……これがおじい様夢・・・?」

彼女達はそう呟きながら、月をじっと見つめていた。

猫猫の策略は完璧だった。

実在するかどうかではなく、
特使が信じるに足る“奇跡”を作り出す
ことこそが目的だったのだ。

そしてその目的は、見事に達成された。

しかし、その裏側では、一人の男が苦労を味わっていた。

“月の精”として舞い、そして
完璧に消えるための演出
を施された壬氏は、そのまま池へと飛び込む羽目になったのだ。

「……まさか、本当に泳ぐことになるとはな。」

対岸まで必死に泳ぎ切った壬氏は、ずぶ濡れのまま息を整えながらぼやいた。

準備小屋へ戻ると、壬氏はふてくされた表情をしていた。

猫猫は平然とした顔で答えた。

「重い衣装で対岸まで泳いで頂きありがとうございました。」

深いため息をつき「まだ髪が乾いていないぞ」とイラつく壬氏の髪を拭く猫猫でした。

こうして、新たな「月の精」の伝説が誕生した。

それは、ほんの一夜の幻のような出来事だったが、特使の記憶には

決して消えない美しい奇跡
として刻まれたことだろう。

この記事のまとめ

  • 特使の祖父が見た「月の精」の正体を猫猫が探る
  • 花街のやり手婆の証言と絵から、後宮の桃園に手がかりを発見
  • 虫捕りをしていた子翠との会話が、猫猫の秘策につながる
  • 壬氏が「月の精」として舞を披露し、幻想的な演出を成功させる
  • 舞の最後に壬氏は池に飛び込み、見事に姿を消す
  • 策略は大成功したが、壬氏は濡れた髪を気にして拗ねる

コメント

タイトルとURLをコピーしました